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振り返り 2026.10.24 竜王戦 七番勝負

歩いた玉
― 竜王戦第2局、三嶋大社で2勝目

第39期竜王戦 第2局 (10/22-23 三嶋大社) を振り返ります。藤井聡太竜王が後手番で132手の勝ち、2勝0敗。封じ手も玉の一手でした。

三嶋大社で2勝目

10月22日から23日、静岡県三島市の三嶋大社でおこなわれた第39期竜王戦七番勝負・第2局。 藤井聡太竜王が服部慎一郎七段に132手で勝ち、2勝0敗としました。

終局は23日の18時34分。 後手番の藤井竜王が、三嶋大社で初めて指された将棋を制しました。

第1局の藤井竜王は、終局の10手前まで玉を動かしませんでした。 この第2局では、玉を6回動かしています。 1日目を締めくくった封じ手も、玉の一手でした。

鹿と、うなぎ

対局前日の21日。 格衣を着て正式参拝を済ませた2人は、樹齢800年ほどのクスノキに触れたあと、境内で鹿にせんべいをあげました。 藤井竜王は「食いつく勢いに圧倒されました」。 2人とも、鹿にせんべいをあげるのは初めてだったそうです(読売新聞 竜王戦中継ブログ)。

前夜祭の会場は、ふだん結婚式に使われる場所。 カーテンがゆっくり開いて2人が現れる演出に、「おー」とどよめきが起きました。 質問コーナーのお題は「三島といえば、うなぎ。うなぎのようにつかみどころのない棋士は」。 藤井竜王が挙げたのは伊藤匠二冠で、「読み筋が一致しないことが多くて」。 服部七段の答えは「自分自身があまりつかみどころがない棋風です」でした(同)。

対局の朝は、三島の人が「これほどクリアに見えるのは珍しい」と言うほどの富士山でした。

角換わりと右玉

服部七段は5手目に角道を開け、角換わりを選びました。 第1局では、角の交換を避けて力戦に誘った挑戦者です。 新聞解説の八代弥八段は「服部七段が角換わりを選ぶとは」と驚き、「周到な準備があると考えられます」と話しています(同)。

藤井竜王は玉を盤の右側に置く右玉に構え、相手の出方を待ちます。 つかみどころがないと自称した服部七段は、手数をかけて穴熊にがっちり組みました。 固く囲う先手と、玉を動かしながら構える後手。 対照的な2人の玉が、この一局の軸になります。

午前のおやつは、藤井竜王が三嶋大社名物の福太郎餅。 大社の神事に出てくる福太郎をかたどった、よもぎの草餅です。 控室にも大量に差し入れられ、立会人の青野照市九段は「年だから、私はこんなに食べられないなあ」と笑っていました(同)。

封じ手は玉

1日目の昼食は、藤井竜王が「鰻のカツ勝つカレー」、服部七段がハンバーグとサーロインステーキの膳。 大きな器を見た関係者から「二人とも若い」と声が上がりました(同)。 大盤解説会の山崎隆之九段は、この鰻カツを一口試食してから登壇しています。 「食べたことがなくて、ここは食べておかないと話せない」(同)。

午後は長考合戦でした。 昼食休憩をはさんで、藤井竜王が57分、服部七段が1時間9分。 続いて藤井竜王が1時間33分考え、端の歩を突きました。 午後の再開から約3時間で、進んだのはわずか3手です。

その後、藤井竜王は玉をひとつ前へ出します。 18時を過ぎ、封じ手の時刻を迎えた局面でも手番は藤井竜王でした。 52分考えて封じたのは△4三玉。 玉を、さらにひとつ横へ移す手です。

控室の候補は3つありました。 八代八段は歩を突く手、記録係の宮原暁月三段は角を打ち込む手を予想。 玉を当てたのは、立会人の青野九段だけでした(同)。 2日目の朝、その青野九段が封筒を開けて読み上げると、藤井竜王はすぐに盤上に指しました。 山崎九段は「封じ手の後も、後手は分岐が続くヒリヒリした展開です」と話していました(同)。

藤井竜王は4手後、玉をもう一度動かして落ち着けます。

昼休みをまたいだ角

2日目の午前、藤井竜王は歩を突いて、浮いた先手の銀に狙いをつけます。 青野九段は「羽生善治九段が指しそうな王道の一手。感触がいい」と評しました(同)。

服部七段は44分考えて、先に銀を追ってから歩を取り返しました。 この手順には、後手の角打ちに対する受けを用意しておく意味がありました。 そこで昼食休憩です。

2日目の昼食は、服部七段が「鰻のカツ勝つカレー」。 前日に藤井竜王が食べた一皿です。 藤井竜王は、竜王戦のために開発されたという「勝つおだしのカルボナーラ」を頼みました(同)。

休憩をはさんで35分考え、藤井竜王は72手目に△5五角と打ちます。 この角は相手陣に入って成り、馬になりました。

15時ごろには同じ手のやり取りが続き、控室では「千日手か」という声も上がりました。 藤井竜王はここで馬を引き、繰り返しを自分から打開します。 午後のおやつは三島和紅茶のレモンケーキ。 2日目の午後は飲み物だけのことが多い藤井竜王が、この日はケーキまで頼んでいました(同)。

馬の働き

83手目、服部七段が角を打って馬に当てました。 中継ブログは、ここで形勢が動いたと見ています。 藤井竜王が馬をかわすと、青野九段は「この馬の働きの分だけ後手の模様が良い感じがします」(同)。

ここから藤井竜王は、穴熊のすぐ脇に、歩を続けて打ち込んでいきます。 八代八段は「自分には浮かばない攻め方でしたが、急所を捉えていて藤井竜王が有利です」と話しました(同)。

角と銀を交換したあと、藤井竜王は落ち着いて1筋の歩を取り、持ち駒に加えます。 八代八段は「文字通りの一歩千金です」。 「少し前まで互角でしたが、差を広げる技術がすごいです」とも語っています(同)。 青野九段は検討の手を止め、「差がついた。穴熊は手がつくと早い」と話しました(同)。

最後も角

金銀4枚で固めた穴熊も、歩で少しずつはがされていきます。

132手目、藤井竜王は△6九角と打ちます。 この手を見て、服部七段が投了しました。 昼休みをまたいで打った角が馬になって働き、最後も角を打って決めた一局です。

消費時間は藤井竜王が7時間40分、服部七段が7時間55分。 第1局で1分将棋になった服部七段は、この日も残り5分でした。

次は仁和寺

第3局は11月3日・4日、京都の総本山仁和寺です。 立会人は佐藤康光九段が務めます。

藤井竜王が番勝負を2連勝で始めたのは、今回で23度目。 これまでの22度は、すべてそのままシリーズを制しています。

能楽堂では動かない玉で先勝し、三嶋大社では玉を歩かせて2勝目。 初めて盤が置かれた社で白星を重ねた藤井竜王が、仁和寺で3連勝を狙います。

参考 · Reference 自前解析の評価値推移
Eval · 先手視点
先手 + 後手 − 62手 72手 132手
  • 62手目 — 封じ手の 4三玉
  • 72手目 — 昼休みをまたいだ 5五角
  • 132手目 — 決め手の 6九角
解析条件
エンジン
水匠5
探索深さ
18
1手上限
20秒
最大変動
349cp
形勢逆転
1回
解析手数
131手

評価値は当サイトの自前解析(水匠5(YaneuraOu NNUE 9.41git 64AVX512 TOURNAMENT)/探索深さ18/1手上限20秒)。あくまで参考値で、実戦の最善を保証するものではありません。棋譜・指し手は掲載していません。