一手の順序
― JT杯2回戦、八代弥八段に敗れる
将棋日本シリーズJTプロ公式戦2回戦 (9/12 熊本城ホール) を振り返ります。千日手指し直しの末、藤井聡太竜王・名人が八代弥八段に敗れました。
熊本で、210手
9月12日、熊本市の熊本城ホールでおこなわれた将棋日本シリーズJTプロ公式戦の2回戦。
藤井聡太竜王・名人が八代弥八段に敗れました。 1局目が102手で千日手となり、指し直し局は108手。2局合わせて210手を戦った一日でした。
熊本地震の影響で会場が益城町のグランメッセ熊本から移り、「熊本復興応援対局」として開かれた一番です。 1手につき1万円が熊本県へ寄付されます。
打ち替えの24手
1局目は八代八段の先手で相掛かりになりました。
封じ手は45手目。八代八段が選んだ角の切り込みは、解説の佐藤天彦九段が予想していた手でした。 ここから3手で形勢は大きく振れます。一度は先手に傾き、次の一手でまた戻る。この将棋で最も大きな変動でした。
そのあとが長くなりました。 先手が打ち込み、後手が合駒し、先手が取り、後手が取り返す。この4手が繰り返されます。
打ち込む駒を金と銀で替えているので、同じ形に見えても持ち駒が違います。 中継でも「持ち駒と盤上の駒が入れ替わっているので、同一局面のサイクルが長い」と書かれていました。 24手を往復して、17時03分に千日手が成立しました。
先手を得て、角換わり
指し直し局は先後を入れ替え、藤井竜王・名人の先手です。 持ち時間はなく、初手から1手30秒。17時20分に始まりました。
戦型は角換わり腰掛け銀になりました。 角換わりは藤井竜王・名人が最も多く指してきた戦型で、先手番では8割を超える勝率を残しています。
中盤で差が開きました。65手目に角を成り込んだあたりが、この将棋でいちばん良かった場面です。
67手目、藤井竜王・名人は2七へ香を打ちます。 この香が、あとで効いてきます。
一手の順序
73手目、飛車を6九へ寄りました。
ここが分かれ目でした。この一手で形勢が入れ替わります。本局で形勢が動いたのは、この一度きりです。
2手後の75手目に、藤井竜王・名人は2七の香を2四へ進めています。67手目に打った、あの香です。 解析では、その2四香こそ73手目に指すべき手でした。ほかにも優勢を保てる手はありましたが、いずれも先に指しておく必要があったものです。
同じ手を、2手遅れて指した。 順序が違うだけで、指し手の意味はまるで変わります。
戻らなかった評価値
そこからの八代八段が強かった。
桂を跳ね、香を打ち、金で迫って、玉の周りを一枚ずつ剥がしていきます。 藤井竜王・名人は玉を左右に動かして受けましたが、差は開く一方でした。
73手目のあと、評価値が藤井竜王・名人の側へ戻ることは一度もありませんでした。 最後は馬を引きつけられて詰めろ。108手で投了です。
八代八段はJT杯初出場で、1回戦では増田康宏八段を破っています。 藤井竜王・名人との対戦成績は、これが5戦目で初めての白星でした。
210手ぶんの寄付
この一局で、藤井竜王・名人の通算成績は460勝100敗1分となりました。100敗目です。
デビューから10年目での100敗で、その間に460勝を積み上げています。 JT杯の通算は18戦13勝5敗になりました。
寄付は終局時の手数で計算されます。千日手局の102手と指し直し局の108手、合わせて210手。 長い一日が、そのまま熊本への支援になりました。
次はNHK杯2回戦、勝又清和七段との一戦です。9月13日の10時30分から放送されます。
- 65手目 — 優勢を広げた 9四角成
- 73手目 — 形勢が入れ替わった 6九飛
- 95手目 — 差が開いた 9六金
- エンジン
- 水匠5
- 探索深さ
- 14
- 最大変動
- 866cp
- 形勢逆転
- 1回
- 解析手数
- 107手
評価値は当サイトの自前解析(水匠5(YaneuraOu NNUE 9.41git 64AVX512 TOURNAMENT)/探索深さ14)。あくまで参考値で、実戦の最善を保証するものではありません。棋譜・指し手は掲載していません。