藤井聡太データラボ 対局を、記録する。数字で読む。
プレビュー 2026.08.26 王位戦 七番勝負

初めての2勝2敗で徳島へ
― 王位戦第5局の見どころ

第67期王位戦七番勝負・第5局 (8/26-27 徳島市・渭水苑) の見どころ。2勝2敗で第5局を迎えるのは、藤井王位の王位戦では初めてです。本局は先手番。

徳島で第5局

第67期王位戦七番勝負の第5局が、8月26日・27日の二日制でおこなわれます。

舞台は徳島県徳島市の渭水苑。 藤井聡太王位(24歳)と伊藤匠二冠(23歳)の七番勝負は、2勝2敗で第5局を迎えます。 持ち時間は各8時間。本局は藤井王位の先手番です。

残るは3局。先に2勝したほうが王位を手にします。

王位戦では初めての形

藤井王位が王位を保持して7年目になります。 2020年の第61期で、当時の王位だった木村一基九段から奪いました。以来5期を防衛しています。

奪取から昨期までの6期を並べると、こうなります。

  • 第61期 4勝0敗
  • 第62期 4勝1敗
  • 第63期 4勝1敗
  • 第64期 4勝1敗
  • 第65期 4勝1敗
  • 第66期 4勝2敗

一度も第7局に届いていません。最も長引いた第66期でも6局で終わっています。 そして6期を通じて、2勝2敗という星になったことが一度もありません

七番勝負が折り返しでタイに並ぶ。王位戦では、今期が初めての景色です。

王位戦七番勝負の通算は34戦26勝8敗。負けの8つのうち2つが、今期のものです。

3連敗がない

藤井王位は、いま2連敗中です。 8月5日の王座戦挑戦者決定戦で広瀬章人九段に敗れ、8月18日の第4局で伊藤二冠に敗れました。

デビューからここまで、2連敗は12度あります。 そのうち11度は、連敗明けの一局をすべて勝っています。11戦11勝です。

つまり、3連敗が一度もありません

12度目の連敗明けが、本局になります。 数字は、立て直しの早さを物語っています。

2勝2敗からの第5局と、伊藤二冠

番勝負全体に広げると、藤井王位が2勝2敗から第5局を迎えるのは7度目です。 ここまでの6度は4勝2敗。

勝った4度は、2021年の叡王戦、2023年の王将戦、2024年の竜王戦、2026年の棋王戦。 この4度は、いずれもそのままシリーズを制しています。 2勝2敗からの第5局を取ったとき、藤井王位はタイトルを逃したことがありません。 本局を制すれば、防衛まであと1勝です。

落とした2度は、2024年の叡王戦と2025年の王座戦。相手はどちらも伊藤匠二冠でした。 譲った第5局を、今度は取り返す番です。 直近の対戦となった今年2月の朝日杯決勝は藤井王位が制しており、通算も25戦17勝8敗とリードしています。ほかに持将棋が1局あります。

渭水苑という場所

渭水苑に王位戦の盤が置かれるのは、2021年から6年連続です。 藤井王位はここで4勝1敗。

唯一の黒星が、昨年2025年8月26日の第66期第5局でした。相手は永瀬拓矢九段。 日付も、局数も、今年とまったく同じです。

もうひとつ符合があります。 渭水苑での4勝は、すべて先手番でのものです。落とした1局だけが後手番でした。 そして本局は、先手番です。

藤井王位の先手番通算は271戦238勝33敗。後手番より、10ポイントほど勝率が高くなります。

その渭水苑は、昨年いったん店を閉じています。 運営会社が京都のワークスに替わり、今年2月21日に再び開きました。 生まれ変わった阿波の料亭で指される、最初の王位戦です。

徳島の顔ぶれ

立会人は中田功八段、副立会人は武市三郎七段、記録係は柳瀬俊輔二段が務めます。

武市七段は徳島市の出身。丸田祐三九段門下で、筋違い角の使い手として知られました。 2014年に引退しています。地元で育った棋士が、地元の盤を見守ります。

中田八段は福岡市の出身。三間飛車から居飛車穴熊に速攻を仕掛ける「コーヤン流」で知られます。 前局の長崎では、深浦康市九段と佐々木大地七段という地元の師弟が盤を見守りました。 九州から四国へ、土地の棋士が続きます。

前夜祭は25日18時から、徳島グランヴィリオホテルで開かれました。 中田八段、武市七段、藤井奈々女流初段が出席しています。

2日目の27日15時からは、アスティとくしまで大盤解説会。 解説は武市七段、聞き手は藤井奈々女流初段です。

ABEMAの中継は、1日目が井出隼平五段と冨田誠也五段の解説、聞き手は貞升南女流二段と萩田菜々子女流初段。 2日目は横山泰明七段と戸辺誠七段の解説で、聞き手が加藤結李愛女流二段と内山あや女流二段です。

電車の走らない県で

前局の長崎から、九州を離れて四国へ。8日ぶりの実戦です。

長崎は、日本で最も西にある新幹線の駅の街でした。 今度の徳島は、その反対側にあります。 全国で唯一、電化された路線が1キロもない県。線路の上に架線が一本もなく、地元では、いまも列車を「汽車」と呼ぶそうです。

鉄路で向かうなら、岡山から瀬戸大橋線へ。 快速「マリンライナー」で瀬戸内海を渡り、高松までは電車です。 高松で高徳線の特急「うずしお」に乗り換えると、車両はディーゼルの気動車に変わります。

新幹線の駅から、気動車の県へ。 電車がディーゼルに変わる瞬間ごと味わえるこの道のりは、乗り鉄にはむしろごちそうです。

その徳島で、この夏ひとつ変わったことがあります。 今年6月13日、徳島駅に自動改札機が入りました。 これで47都道府県すべての県代表駅に自動改札機がそろいました。徳島駅が、最後の1駅でした。 読み取れるのはQRコードのきっぷと磁気券だけで、ICOCAやSuicaはまだ使えません。

対局前日のインタビューでは、この改札の話題が藤井王位にも向けられました。

第4局を分けたのは、相手に渡した銀でした。 第1局から第3局までは、桂が三局を分けています。

徳島で何が動くのか。架線のない空の下で、二日間の攻防が始まります。