王位戦67期 第4局
― 渡した銀。長崎で伊藤二冠がタイに戻す
第67期王位戦 第4局 (8/18-19 ガーデンテラス長崎ホテル&リゾート) を振り返ります。伊藤匠二冠が143手で勝ち、七番勝負は2勝2敗のタイに戻りました。
長崎で、振り出しに
8月18日から19日、長崎県長崎市のガーデンテラス長崎ホテル&リゾートでおこなわれた第67期王位戦七番勝負・第4局。
伊藤匠二冠が先手番で143手で勝ち、七番勝負は2勝2敗のタイに戻りました。 藤井聡太王位にとって、長崎に盤が置かれるのは番勝負で初めてのことでした。 初めての土地で、リードを守れませんでした。
戦型は相掛かり。持ち時間は各8時間の二日制です。
眠れない夜と、2時間の遅れ
この一局は、2日目の朝から普通ではありませんでした。
19日未明、宿泊施設の火災報知器が繰り返し作動し、対局者を含む関係者が一時避難する事態が起きています。 のちに誤作動と確認されましたが、影響を考慮して対局再開は午前9時から11時に変更されました。
2時間の繰り下げは、その日の組み立てを変えます。 藤井王位の午前のおやつは昼食の時間に回され、伊藤二冠が頼んだ午前のおやつは午後に出されることになりました。
この日、特別に夕食休憩が設けられることはありませんでしたが、17時を過ぎたころ、両者の控え室におにぎりが用意されたようです。
終局は21時30分。長い一日でした。
1日目に注ぎ込まれた時間
序中盤は互角のまま進みます。 形勢が動き始めたのは、1日目の終盤に入ってからでした。
69手目の6五馬に、伊藤二冠は115分を投じます。 それに藤井王位は0分で応じ、72手目の6四歩に今度は66分。
そして74手目、藤井王位が101分をかけて封じ手を選びました。 盤上の狙いを一手隠したまま、長崎の夜が更けていきました。
2日目に入っても長考は続きます。 77手目の6三香打に伊藤二冠が111分、83手目の6一香成に87分。 69手目から86手目までの18手で、両者が費やした時間は10時間を超えました。
ここが勝負どころだという認識は、二人とも同じだったのだと思います。
96手目 △5五銀打 ― 渡した銀
90手を過ぎても、形勢はほぼ互角のままでした。
均衡が崩れたのは、96手目からの構想です。 藤井王位は7分の考慮で5五銀打を選び、98手目に6六銀と出ました。銀を相手に渡して、その見返りに攻めの形をつくる組み立てです。
しかしこの2手で、形勢は入れ替わりました。
98手目の局面には、6五桂と打つ手がありました。 また96手目まで遡れば、7六歩と垂らす手が最善だったようです。銀を打ち込む派手さのない、見えにくい一手でした。 盤の前で選ぶには、あまりに地味な手だったのかもしれません。
渡した銀は、そのまま相手の攻め駒になりました。
101手目 ▲4一銀打 ― 2分の返答
101手目、伊藤二冠は4一銀と打ち込みます。 この手にかけた時間は、わずか2分でした。
4一銀が狙いということは、実は、83手目の6一香成からこの構想があったように思えます。 藤井王位の攻めには、銀が必ず使われることを見越して、6一香成そして、9一飛成としておいた。
そして、手に入った銀を2分で4一銀とした。 となると、恐ろしい構想ですね。伊藤二冠恐るべしです。
この銀打ち後は、さすがの王位も耐えることは難しく、143手、藤井王位が投了。
第1局から第3局までは、桂馬が鍵でしたが、第4局を分けたのは、銀でしたね。
次は徳島へ
第5局は8月26日・27日、徳島市の渭水苑でおこなわれます。
2勝2敗。残るは3局で、先に2勝したほうが王位を手にします。 七番勝負のなかに、あらためて三番勝負が生まれた形です。
藤井王位の王位戦七番勝負は、通算34戦26勝8敗。 タイに戻された経験も、そこから防衛した経験も持っています。
長崎で渡した銀の分を、徳島でどう取り返すのか。 夏の七番勝負は、ここからが本番です。
- 96手目 — 銀を渡す構想の入口 △5五銀打
- 98手目 — 形勢が入れ替わった △6六銀
- 101手目 — 2分で咎めた ▲4一銀打
- エンジン
- 水匠5
- 探索深さ
- 18
- 最大変動
- 680cp
- 形勢逆転
- 3回
- 解析手数
- 142手
評価値は当サイトの自前解析(水匠5(YaneuraOu NNUE 9.41git 64AVX512 TOURNAMENT)/探索深さ18)。あくまで参考値で、実戦の最善を保証するものではありません。棋譜・指し手は掲載していません。