藤井聡太データラボ 対局を、記録する。数字で読む。
振り返り 2026.07.16 王位戦 七番勝負

王位戦67期 第2局
― ふたつの4五桂。藤井王位がシリーズをタイに戻す

第67期王位戦 第2局 (7/15-16 中の坊瑞苑) を振り返ります。藤井王位が後手番で勝利し、七番勝負は1勝1敗のタイに戻りました。

有馬の地で、タイに戻す

7月15日から16日、兵庫県神戸市・有馬温泉の中の坊瑞苑でおこなわれた第67期王位戦七番勝負・第2局。

藤井聡太王位が後手番で伊藤匠二冠を迎え、100手で勝利しました。 第1局を落として0勝1敗と迎えたこの一局、絶対に連敗は避けたいという星でした。 結果は七番勝負を1勝1敗のタイに戻す、着実な一勝です。

戦型は相掛かり

戦型は相掛かりでした。 序盤から飛車先の歩をぶつけ合う、まっすぐな力比べです。 持ち時間は各8時間の二日制。戦いは1日目の午後、早くも核心に入っていきます。

63手目 ▲4五桂 ― 伊藤の勝負手

1日目の15時44分に指されたのが、63手目の▲4五桂です。

このとき伊藤二冠は羽織を脱ぎ、着物姿で盤に向かっていました。考慮は30分超。 そこから放たれた桂跳ねに、控室の山崎隆之九段は「桂跳ねは驚きました。勝負にいきましたね」と反応しました。 桂交換になれば後手玉に王手筋も生まれる、踏み込んだ一手です。

ここで思い出したいのが、第1局です。 浜松での第1局、先手の藤井王位が攻めをつなげにいって誤算となったのが、55手目の▲4五桂でした。 そして迎えた第2局。今度は先手の伊藤二冠が、同じ4五のマスに桂を跳ねて形勢を損ねることになります。 初戦は藤井を、二局目は伊藤を裏切った、ふたつの4五桂。勝負の綾とは不思議なものです。

1時間超の長考、△3五角

もっとも、山崎九段はこの少しあとに自分の読みを訂正しています。 「いや、単に△3五角のほうがいいのかな」――そう言い直したのと同じ手を、藤井王位も選びました。

64手目、藤井が指した△3五角。本局で初めて1時間を超える長考でした。 盤上の均衡は、この一手を境に静かに動きます。押しているのは、伊藤ではなく藤井でした。

そのまま1日目は18時を迎え、伊藤二冠が69手目を封じて指し継ぎとなります。 2日目の朝、封じ手は立会人の福崎文吾九段・副立会人の山崎九段がともに予想していた一手で開封されました。

受けきって、必至へ

2日目の終盤は、互いに玉を薄くしながらの寄せ合いになりました。

藤井王位が一段目に飛車を打ち込んで詰めろをかけると、伊藤二冠も角を切り飛ばして王手で食らいつきます。 しかし藤井は的確な合駒でしのぎ、先手の攻めはそこまで。 返す刀で放った96手目の△5八馬が決め手でした。先手玉に必至がかかり、後手玉には詰みがありません。

伊藤二冠は形を作って投了。終局は16時5分、100手までの熱戦でした。

タイに戻し、次は北の大地へ

これで七番勝負は1勝1敗のタイ。 藤井王位にとって、中の坊瑞苑での対局は今回で7局目。これで7戦7勝となりました。 実力で勝ち切った一勝であり、地の利も味方につけた形です。

次の第3局は7月29日・30日、北海道登別市の登別グランドホテルへ舞台を移します。 温泉地から温泉地へ。ふたつの4五桂で1勝ずつを分け合ったふたりの、仕切り直しの一局が楽しみです。

参考 · Reference 自前解析の評価値推移
Eval · 先手視点
先手 + 後手 − 63手 64手 96手
  • 63手目 — 伊藤二冠の勝負手 ▲4五桂
  • 64手目 — 1時間超の長考 △3五角
  • 96手目 — △5八馬で必至
解析条件
エンジン
水匠5
探索深さ
18
最大変動
634cp
形勢逆転
1回
解析手数
99手

評価値は当サイトの自前解析(水匠5(YaneuraOu NNUE 9.41git 64AVX512 TOURNAMENT)/探索深さ18)。あくまで参考値で、実戦の最善を保証するものではありません。棋譜・指し手は掲載していません。